マンションを購入する際、多くの人が間取りや日当たり、駅からの距離といった目に見える要素に注目します。しかし、建物の壁や床下に隠された排水管の状態は、そのマンションの将来的な資産価値を大きく左右する、見過ごすことのできない重要な要素です。快適な生活の基盤でありながら、一度問題が発生すると多額の修繕費用や住民間のトラブルを引き起こしかねない排水管は、まさにマンションの隠れた生命線と言えるでしょう。 マンションの排水管は、専有部分と共用部分に分かれていますが、そのどちらも経年劣化から逃れることはできません。特に、長年使われてきた金属製の配管は、内壁に錆びや腐食が発生しやすく、そこに油や髪の毛などの汚れが付着・蓄積することで、詰まりや水漏れのリスクが年々高まっていきます。ひとたび共用部分である竪管で深刻な水漏れ事故が発生すれば、複数の住戸に被害が及び、その修繕には足場を組むなどの大規模な工事が必要になることも少なくありません。こうした大規模修繕は、マンションの長期修繕計画に基づいて行われますが、計画が不十分であったり、修繕積立金が不足していたりすると、適切な時期にメンテナンスが行われず、建物の劣化を加速させてしまいます。 中古マンションを検討する際には、必ず「長期修繕計画書」や「重要事項調査報告書」に目を通し、排水管の材質や過去の修繕履歴、そして将来の更新計画について確認することが極めて重要です。例えば、耐久性の高い樹脂製の配管に更新済みであるか、あるいは何年後に更新が予定されているのかといった情報は、そのマンションの管理状態の良し悪しを判断する上での大きな指標となります。排水管のメンテナンスが適切に行われているマンションは、将来にわたって水回りトラブルのリスクが低く、住民が安心して暮らせるだけでなく、売却する際の資産価値も維持されやすい傾向にあります。目に見える華やかさだけでなく、見えないインフラの健全性こそが、マンションという共同資産の真の価値を支えているのです。
マンションの排水管と資産価値、見えない部分の重要性