長い戦いの末、ついに部屋のゴミが全てなくなり、床が見えた時の達成感は格別です。しかし、安心してはいけません。ゴミ屋敷の掃除において、ゴミの撤去はまだ前半戦。本当の意味で安全で快適な生活空間を取り戻すためには、その後の徹底的な「清掃」と「消毒」という、より専門的なやり方が求められるのです。ゴミがなくなった後の部屋は、一見きれいになったように見えても、長年の汚れが床や壁にこびりつき、目に見えないカビや細菌が大量に潜んでいます。ここからが、本当の意味での「掃除」の始まりです。まず、床の清掃です。掃除機でホコリやゴミの残骸を丁寧に吸い取った後、アルカリ性の住宅用洗剤などを使い、雑巾で水拭きをします。長年こびりついた黒ずみやベタつきは、洗剤をスプレーしてしばらく放置し、汚れを浮かせてから、使わなくなったカードやプラスチック製のヘラで削ぎ落とすと効果的です。次に、壁です。壁にもホコリやヤニ、カビが付着しています。固く絞った雑巾で上から下へと拭いていきましょう。特に、壁紙に発生した黒カビは、健康被害の原因となるため、市販のカビ取り剤を使って根絶やしにする必要があります。その際は、換気を十分に行い、ゴム手袋とゴーグルを必ず着用してください。そして、最大の難関がキッチンやトイレ、浴室といった水回りです。シンクやコンロ周りには油汚れが、蛇口や浴槽には水垢や石鹸カスが、タイルの目地には頑固なカビがこびりついています。それぞれの汚れに適した専用の洗剤(油汚れにはアルカリ性、水垢には酸性など)を使い分け、ブラシやスポンジで根気よく磨き上げましょう。最後の仕上げは、部屋全体の消毒です。薬局などで手に入る消毒用エタノールを布に含ませ、ドアノブやスイッチ、床や壁など、手が触れる場所を中心に拭き上げていきます。この地道で過酷な清掃・消毒作業を乗り越えてこそ、ゴミ屋敷は初めて「住める部屋」へと生まれ変わるのです。